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故障事例
時計の故障事例を掲載しております。見たい項目の写真をクリックしてください。


fileNO.move-01 電池の液もれ
■解説
電池切れのまま何年も放っておくと電池内部の電解液が漏れることがあります。これは、電池内部のシール劣化などによって引き起こされますが、電池の製造不良により発生する場合もあります。漏れた液をそのままにしておくと端子や回路を腐食させたり、歯車の動きを止めたりしますので調子が悪くなり、止まります。電池切れで止まったら新しい電池に直ぐ交換することをお勧めします。

fileNO.move-02 ゼンマイ切れ
■解説
ゼンマイ切れは、ある日突然やってきます。オーバーホール時に問題がなくても直後に切れる事もあります。チェックで判ることもありますがこのようなケースは稀です。左上の写真は切れる直前のゼンマイで、金属疲労により中心部分に折れ曲がりが発生しています。
切れるのは時間の問題です。切れる箇所はほぼ似通っていますが、手巻きのゼンマイは後端の引っ掛け部のはずれがほとんどです。ゼンマイの入っている筒状のものを香箱と呼びます、またゼンマイの中心にある軸を香箱芯と呼びます。

fileNO.move-03 水入り(水没)/錆び
■解説
水が入るのは、リューズ部分のパッキン劣化が原因のほとんどを占めます。入り込んだ水分はあっという間に機械をさび付かせますので直ぐに対処する必要があります。
1週間も放置すると写真のように取り返しのつかない状態になり、当然修理費用も高額になります。時計のガラスが曇ったら要注意です、いずれ水浸しになる可能性がありますので直ぐに対処する必要があります。

fileNO.move-04 ガラス割れ
■解説
サファイヤガラスは割れると目に見えない程細かい破片がでます。文字盤のカレンダー窓や針の取り付け口などから内部に入り込み歯車を破損させます。破片が出るほどの割れとなってしまった場合は、リューズを引いて時計の動きを止める必要があります。
動かし続けることで被害はどんどん広がってゆきますのでなるべく停止させておいて下さい。

fileNO.move-05 夜光塗料取れた
■解説
侵入した水分や紫外線、あるいは落下衝撃などにより針に塗布してある夜光塗料が取れてしまうことがあります。再塗布することが可能です。


fileNO.move-06 油切れ、焼付き
■解説
時計の機械にも潤滑油が注油してありますが、歯車そのものではなく、中心軸に注油します。潤滑油は自然に劣化しますが、水分や摩擦によってさらに劣化は進行します。まず、乾きはじめ、次に汚れが目立つようになり、最後には軸は焼き付き、更に摩耗へと進行します。摩耗が進行してしまうと部品交換するしかないのですが、焼き付きまでの状態であれば軸を研磨することで機能回復可能です。
写真の歯車の中心軸を見ると、歯車軸が赤く変色して焼きついていることが判ります。

fileNO.move-07 歯車破損
■解説
カレンダー板を回転させ、曜日を送る歯車列機構の中間車の歯にヒビ割れが発生しています。この結果、カレンダーが送らないという不具合が発生していました。
同様に歯車の欠けによってカレンダー送りが出来なくなっていました。ツヅミ車という特殊形状の歯車ですが、歯が1枚欠けてしまっています。ゼンマイに直結される角穴車という歯車ですが、歯が何枚も欠けてしまいゼンマイを巻き上げることが出来なくなっていました。

fileNO.move-08 ヒゲゼンマイ
■解説
渦巻状で、細くゼンマイ状になっている部分をヒゲゼンマイと呼びます。このヒゲゼンマイが伸びたり縮んだり(収縮)を繰り返すことで時刻を刻む大元のタイミングを作り出します。非常に細く繊細なために、衝撃や経年変化によって変形することがあります。変形すると動作タイミングが狂い、進みや遅れ、時計の姿勢による差異が発生し調子が悪くなってきます。限りなく同心円状で、かつ微細な平衡度が要求されます。写真の画像では、同心円になっておらず、偏心が見られます。
<ヒゲゼンマイ絡み>
右下の写真は衝撃によってヒゲゼンマイが波打ち、収縮伸張する際に緩急針に引っかかり絡み付いてしっまっています。このようになると時間が異常に進むようになります。(1時間に5分以上進む場合もあります)落とした時から異常に時間が進むなどの現象が現れるときは、ほぼ90%以上の確率でヒゲゼンマイの絡みつきが原因です。元の位置に戻し、変形を修正することで直ります。

fileNO.move-09 穴石
■解説
中心部に赤いルビーがいくつも見えますが、これが穴石です。穴石の中心には穴が開いていて、この穴に歯車の軸が入ります。軸受けと言い換えることも出来ます。穴石は受け板の穴に圧入されていて、1000分の数ミリ単位で位置調整されていますが衝撃などにより位置がずれることがあります。ずれると歯車自体の位置が上下に狂いますので、場合によっては歯車同士が接触してしまうことがあります。穴石には潤滑油が注油されているのですが、水分や摩擦によって劣化して歯車軸が焼き付き、摩耗してしまうことがあります。稀に穴石が割れることもあります。

fileNO.move-10 磨耗
【香箱受け(1番受け)】
■解説
ゼンマイを巻き上げる時に使う歯車の受け板(「香箱受け」または「1番受け」と言います)ですが、潤滑油は切れ、焼き付きを通り越して摩耗してしまっています。受け板から直接でている軸が摩耗していますので、受け板ごと交換する必要があります。ひし形の左側が減っているのがわかります。
【歯車の摩耗】
歯車断面図
■解説
歯車は上下の軸を地板、受けに挟まれて隣り合う歯車と噛み合い回転しています。軸との摩擦を軽減するために穴石という人工ルビーが使用され、穴石と軸の間には潤滑油が注してあります(上図)。
時間の経過と共に油は乾燥・劣化し次第に軸が焼付き、更には摩耗してしまいます(下図)。こうなると歯車がガタついて正常に回転できなくなってしまいます。

fileNO.move-11 リューズ破損
■解説
リューズの内側ですが、ネジ溝がみえます。ねじ込み式のリューズ構造です。ロレックスのリューズですが、分解するとこのようにスプリングが内蔵されていて、伸び縮みします。スプリングが折れてしまうこともあります。リューズの先についているネジは巻芯という部品で、機械内部と接続されゼンマイを巻き上げたり、カレンダーの早送りや時間調整を行います。リューズを何かにぶつけたりすると、巻芯が折れてしまうことがあります。

fileNO.move-12 薄型ドレスウォッチのリューズ操作について

薄型ドレスウォッチのリューズの引き方について、注意していただきたい点がございます。
薄型ドレスウォッチは、リューズが小さく、ケースに隠れるようについているものが多いです。これはデザインを優先し、尚且つ薄型であることに起因しております。
手・指の大きさに比べてリューズがあまりに小さい(特に男性の場合)為、引き出しにく、つい強く引っ張りすぎてリューズが抜けてしまうことがあります。
ここでは、薄型ドレスウォッチのリューズの引き方について解説いたします。

■良い例
写真のように親指と人差し指(または中指)をリューズに添えます、このとき人差し指の爪をケースとリューズの間に差し込みます。次に差し込んだ指を曲げる感じでリューズを引いてください。注意していただきたいのは、親指と人差し指でリューズをつまみ引っ張りあげるという感じではなく、親指は添える程度(リューズを押さえる役目)で、人差し指の曲げる力でリューズを起こすように引いてあげるということです。
内部の機械も小さく、繊細に出来ていますので、力を入れなくてもリューズを引くことができるような構造となっております。
ドレスウォッチと言う名称からも、扱いも紳士的にと言うことですね。


■悪い例
写真のように一本の指だけでリューズを引っ掛け引っ張りあげたり、2本の指でつまんで引こうとするやり方です。
一本の指では、リューズに片側からだけの力が加わるため、曲がったり、折れたりすることがあります。
2本の指でつまんで引こうとすると力がかかりすぎて、内部機械の留めている部品が破損したり故障の原因となります。